1歳半健診で積み木ができないとお悩みの方へ|発達の目安と焦らないためのポイント

 

1歳半健診が近づくと、問診票にある「積み木を積めますか?」という項目を見て不安になる親御さんは少なくありません。自宅で試してみても、子供が積み木を投げたり壊したりするばかりで、全く積む気配がないと「うちの子は発達が遅れているのでは」と心配になってしまいますよね。

 

しかし、1歳半という時期は発達の個人差が非常に大きく、その日の機嫌や環境にも左右されやすい時期です。この記事では、1歳半健診で積み木をチェックする目的や、できない場合の背景、そして家庭で楽しく取り組める遊びのヒントを詳しく解説します。

 

1歳半健診で積み木ができない理由は?健診でチェックされる意図を理解する

 

1歳半健診で積み木がチェック項目に入っているのには、単に「積めるかどうか」だけではない、いくつかの重要な理由があります。保健師や医師は、積み木という道具を通して、お子さんの多角的な発達状況を確認しようとしています。

 

なぜ健診で積み木を積むテストが行われるのか

1歳半健診で積み木を積む様子を確認するのは、主に「手指の巧緻性(こうちせい)」と「模倣(もほう)の能力」、そして「指示の理解」を確認するためです。巧緻性とは、指先を細かく上手に使う能力のことで、小さな積み木をつまんで、正確な位置にそっと置くという動作には、高度な身体のコントロールが必要とされます。
また、大人が「こうやってやってごらん」と見本を見せたときに、それを真似しようとする「模倣」の意欲があるかどうかも大切なポイントです。相手の意図を汲み取り、同じ行動をしようとする社会性の発達も同時に見ています。さらに「積んでみてね」という言葉の意味を理解できているかという、言語理解の側面も評価の対象となっています。
積み木はあくまで発達を確認するための「道具」の一つに過ぎません。たとえ積み木が積めなかったとしても、他の場面で指先を使えていたり、大人の真似ができていたりすれば、総合的に判断されることになります。できないことだけに目を向けず、健診の意図を広く捉えることが大切です。

 

1歳半で積み木ができる目安と個人差について

一般的に、1歳半健診で求められる目安は「2個から3個の積み木を垂直に積めること」とされています。しかし、この時期の子供たちの成長スピードは驚くほどバラバラです。1歳を過ぎてすぐに積めるようになる子もいれば、1歳後半になってから急にコツを掴む子もいます。
厚生労働省などの調査を見ても、1歳半で積み木が2段以上積める割合は高いものの、全員が完璧にできるわけではありません。手指の筋肉の発達がゆっくりな子もいますし、単純に「積むこと」に興味が湧いていないだけというケースも非常に多いのです。特に、男の子よりも女の子の方が指先の使い始めが早い傾向があるなど、性別による違いが見られることもあります。
また、普段は自宅でできているのに、健診という特別な場所では緊張してできないということも珍しくありません。健診での一瞬の姿がすべてではないため、「今の段階では興味が別のところにあるんだな」とゆったり構える姿勢が、親御さんの精神的な安定にもつながります。

 

健診当日にできないケース:緊張や場所見知りの影響

1歳半健診の会場は、普段とは違う独特の雰囲気があります。大勢の知らない人がいて、泣いている子の声が響き、見慣れない白い服を着た大人が目の前に座っている環境は、小さな子供にとって非常に大きなストレスとなります。このような状況で、いつも通りのパフォーマンスを発揮するのは至難の業です。
場所見知りや人見知りが激しいお子さんの場合、緊張で体が強張ってしまったり、椅子に座ること自体を拒否してしまったりすることもあります。また、診察室にある他の器具やポスターに気を取られてしまい、積み木に集中できないというのもよくある光景です。これらは「能力がない」のではなく、「環境に適応しようと頑張っている最中」なのだと理解してあげましょう。

健診当日にできなかった場合は、保健師さんに「家ではできているのですが、今日は緊張しているみたいです」と正直に伝えて大丈夫です。もし家でもできていない場合は、「家では積み木よりもミニカーが好きで、積むよりも走らせて遊んでいます」といった普段の様子を具体的に話すと、より正確な発達判断の助けになります。

 

成長のペースは一人ひとり違う!積み木が積めるようになるまでのステップ

 

積み木を積むという動作は、大人にとっては簡単ですが、子供にとってはいくつもの発達段階をクリアして初めて到達できる高度な技術です。いきなり完成形を求めるのではなく、今お子さんがどのステップにいるのかを観察してみましょう。

 

指先の細かな動き(巧緻性)の発達状況

積み木を積むためには、まず自分の意志で物をつかみ、離すという動作がスムーズにできなければなりません。1歳前後になると、手のひら全体で物を握る「わしづかみ」から、親指と人差し指を使って物をつまむ「指先つまみ」へと進化していきます。この指先の分離した動きが、積み木を正確に置くための基礎となります。
また、積み木を置く瞬間に「パッ」と手を離す動作も、実は難しい課題です。せっかく積もうとしても、手を離すタイミングがズレてしまえば、積み木は崩れてしまいます。指先の筋力だけでなく、手と目の動きを連動させる「手眼協調(しゅがんきょうちょう)」の発達も、積む動作には欠かせない要素なのです。
もしお子さんがまだ積み木を上手に積めないのなら、まずは小さなボーロをつまんで食べたり、シールを剥がしたりといった、日常の何気ない動作で指先を使っているかチェックしてみてください。積み木以外の場面で指先が使えていれば、身体的な機能としての発達は着実に進んでいると言えるでしょう。

 

模倣(真似っこ)する意欲と大人の真似をする力

子供は周囲の大人の行動をよく見て、それを模倣することで多くのことを学びます。積み木についても、「大人が積んでいる様子を見て、自分もやってみたいと思う」という意欲がスタート地点になります。この「真似をしたい」という気持ちは、他者への関心の表れでもあります。
1歳半頃は、パパやママが掃除機をかける真似をしたり、電話を耳に当てる仕草をしたりと、いわゆる「ごっこ遊び」の芽生えが見られる時期です。もし積み木を積まないとしても、こうした生活の中での模倣が見られるのであれば、コミュニケーション能力や理解力は順調に育っていると考えて良いでしょう。
積み木に興味を示さない場合は、単に「積む」という遊びの面白さに気づいていないだけの可能性があります。無理に練習させるのではなく、まずは大人が楽しそうに積んでみせ、それを崩す遊びから始めるなど、「親とのやり取りを楽しむ道具」として積み木を位置づけることから始めてみてください。

 

集中力の持続時間と興味の対象の偏り

1歳半の子の集中力は、非常に短いものです。一つの遊びに熱中できる時間は数分程度であり、少しでも他に気になるものがあれば、すぐに意識が逸れてしまいます。健診の場で、目の前の積み木よりも隣の部屋から聞こえる音が気になってしまうのは、好奇心が旺盛な証拠でもあります。
また、この時期は興味の対象がはっきり分かれることも多いです。「動くもの(車や電車)」が好きな子、「音が出るもの」が好きな子、「身体を動かすこと」が好きな子など、個性が強く出始めます。積み木のような静的な遊びにあまり興味を惹かれないタイプのお子さんも当然いらっしゃいます。

「できない」のではなく「やりたくない」「興味がない」というケースは多々あります。発達の遅れを心配する前に、お子さんが今何に夢中になっているか、何を楽しんでいるかを観察してみましょう。好きなことに没頭する力があるのなら、集中力の基礎はしっかりと育まれています。

 

もし1歳半健診で「できない」と判断されたら?その後の流れと向き合い方

 

健診で積み木ができなかったり、他の項目でも不安が残ったりした場合、その場で「経過観察」や「要再検」と伝えられることがあります。その言葉を聞くとショックを受けるかもしれませんが、それは決して「失格」という意味ではありません。

 

経過観察(再検診)になるケースと基準

1歳半健診での経過観察は、決して珍しいことではありません。積み木が積めない、指差しが出ない、言葉が数個しか出ていないといった場合に、数ヶ月後にもう一度様子を見せてくださいと言われることがあります。これは、現在の遅れが一時的なものなのか、継続的なサポートが必要なものなのかを慎重に見極めるための期間です。
自治体によって基準は多少異なりますが、基本的には「現時点での発達を確認し、家庭での様子を見守ってもらう」というスタンスが一般的です。3ヶ月から半年後の「2歳児相談」などで再度確認し、その間にどれくらい成長したかを確認します。この時期の数ヶ月は成長が著しいため、次に行くときにはあっさりできるようになっていることも多いのです。
経過観察になったからといって、毎日特訓をする必要はありません。むしろ、専門家に見守ってもらえる安心な機会が増えたと前向きに捉えましょう。何か困ったことがあったときに、すぐに相談できる窓口ができたと考えれば、気持ちが少し楽になるはずです。

 

発達相談や専門機関への相談が必要なタイミング

もし積み木ができないことに加えて、他にも気になる点(目が合わない、呼んでも振り向かない、極端に激しいパニックがあるなど)が重なっている場合は、発達相談や専門機関の受診を勧められることがあります。これは早期に適切な関わり方を知るためのステップであり、お子さんの将来を支えるための前向きな行動です。
専門機関では、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)といった専門家が、遊びを通して子供の発達を詳しく分析してくれます。例えば、指先の使い方が苦手な子にはどのような遊びが効果的か、言葉が出にくい子にはどのような声掛けが良いかなど、具体的なアドバイスを受けることができます。
自分一人で悩み続けるよりも、専門的な知識を持つ人の力を借りることで、子育ての見通しが立ちやすくなります。「まだ早いかも」と思わず、親御さん自身が不安を感じているのであれば、それが相談に行くべき一番のタイミングです。地域の保健センターや子育て支援センターは、いつでもあなたの味方になってくれます。

 

健診の結果をポジティブに捉えるための考え方

健診は「子供を採点する場」ではなく、公的なサポートを受けるための「窓口」です。たとえ項目にチェックがつかなかったとしても、それは親御さんの育て方のせいではありません。発達のペースは遺伝的な要素や個人の気質が大きく関係しており、誰かと比べて落ち込む必要は全くないのです。

1歳半健診の結果に一喜一憂しすぎないために、以下のポイントを意識してみてください。

意識したいポイント 具体的な考え方
点数ではなく「今」を見る 健診の項目に囚われず、今日できた小さな成長(笑顔が増えた等)を喜ぶ。
長い目で見守る 1歳半はまだ人生の序盤。数年後には誰もが当たり前にできることだと考える。
自分を責めない 子供の成長は親の努力だけで決まるものではないと割り切る。

 

無理せず楽しく!自宅で積み木遊びを促すための具体的なアプローチ

 

健診での結果がどうであれ、家庭で楽しく指先を使う機会を作ることは素晴らしいことです。ただし、「練習」という形ではなく、あくまでもお子さんが「楽しい!」と思える遊びとして取り入れていくのがコツです。

 

まずは「崩す」ことから!積み木に興味を持たせるコツ

積み木遊びの基本は、実は「積む」ことよりも「崩す」ことにあります。高く積まれたものがガシャーンと音を立てて崩れる様子は、子供にとって非常に刺激的で面白い現象です。まずは大人が高く積み上げたタワーを、お子さんに勢いよく崩してもらう遊びから始めてみましょう。
自分で壊したものが大きな音を立てる経験は、「自分の行動で何かが変わった」という万能感や達成感につながります。何度も崩して遊んでいるうちに、次第に「これ、どうやってできているんだろう?」と積み木そのものに興味が移っていきます。崩す遊びを十分に楽しんだ後に、自然と1個、2個と自分で置こうとする姿が見られるようになります。
また、積み木を箱から全部出す、ジャラジャラと音を立てて混ぜるといった行為も、この時期の大切な遊びです。まずは「積み木は楽しいおもちゃなんだ」というポジティブなイメージを植え付けることが、将来的な「積む動作」への近道となります。

 

子供が積みやすい積み木の選び方と環境作り

もしお子さんが積み木を積むのに苦労しているなら、道具が合っていない可能性もあります。1歳半前後の子には、ある程度大きさと重さがある積み木が適しています。軽すぎるプラスチック製のものや、小さすぎるパーツは、バランスを取るのが難しく、すぐに倒れてしまうため達成感を得にくいのです。
おすすめは、4cm角程度の白木の積み木です。適度な重みがあり、表面が滑りすぎないため、少しズレて置いても止まりやすいという特徴があります。また、面取り(角を丸く削る加工)が丁寧になされているものを選ぶと、手触りが良く、安心して遊ばせることができます。
遊ぶ環境も重要です。毛足の長いカーペットの上では土台が安定しないため、積み木がすぐに倒れてしまいます。フローリングの上や、硬めのプレイマットの上など、平らで安定した場所で遊ぶように工夫してあげましょう。ちょっとした環境の変化で、お子さんのやる気が劇的に変わることもあります。

 

積み木以外の遊びで指先の発達を促すアイデア

積み木だけが指先のトレーニングではありません。日常の遊びの中には、巧緻性を高めるヒントがたくさん隠されています。例えば、粘土遊びは指先でこねたり丸めたりすることで、手全体の筋肉を鍛えるのに最適です。柔らかい素材なので、力加減を学ぶのにも役立ちます。
また、大きなシールを台紙から剥がして、画用紙にペタペタ貼る遊びもおすすめです。「つまむ」という動作と「狙った場所に置く」という動作の両方を練習できます。お風呂で水鉄砲を使ったり、スポンジを絞ったりする動作も、握力の強化につながります。

遊びに正解はありません。もし積み木に飽きてしまったら、以下のような遊びも試してみてください。
・ペットボトルのキャップを閉める、開ける(大人が少し緩めておく)
・ティッシュ箱から布(ハンカチ)を引っ張り出す
・大きなボタンの掛け外し(おもちゃとして用意する)
・穴の開いた容器にストローや割り箸を入れる「ポットン落とし」

 

指先の発達だけじゃない!1歳半健診で大切にしたいコミュニケーション

 

積み木の出来不出来に目が行きがちですが、1歳半健診ではお子さんの心の発達や、親子間のコミュニケーションの状態も非常に重視されています。数値や成功率では測れない「生きる力」の芽生えに注目してみましょう。

 

言葉の理解と発語(指差しや意味のある言葉)

1歳半になると、少しずつ言葉のやり取りが成立し始めます。「ワンワンはどこ?」と聞いたときに指を差して教えてくれる、あるいは「ちょうだい」「どうぞ」というやり取りができるかどうかが、言葉の表出(しゃべること)以上に重要視されることもあります。
言葉がまだ出ていなくても、こちらの言っていることを理解して行動できているのであれば、脳内にはたくさんの言葉が貯金されている状態です。これを「受容語(じゅようご)」と呼びますが、この貯金が溢れたときに、一気に言葉として出始める子が多いのです。積み木が積めなくても、こちらの指示を理解してニコニコしているなら、そのコミュニケーション能力は十分に育っています。
大切なのは、親御さんがお子さんの発する小さなサインを受け止めているかどうかです。指差しに対して「そうだね、赤い車だね」と応答することで、お子さんの「伝えたい」という気持ちがさらに強化されます。健診の場でも、こうした親子の温かいやり取りこそが、最も高く評価されるポイントなのです。

 

運動機能(歩行や姿勢)の確認ポイント

積み木などの微細な動作は、実は粗大運動(歩く、走る、登るといった大きな動作)の安定の上に成り立っています。1歳半健診では、一人歩きが安定しているか、階段を昇り降りしようとするかといった運動機能もチェックされます。体幹がしっかりし、姿勢が安定することで、初めて指先に意識を向けられるようになるからです。
もしお子さんがとても活発で、常に走り回っているようなタイプであれば、今は「積む」ことよりも「動く」ことで自分の体をコントロールする術を学んでいる時期なのかもしれません。身体を動かす遊びを存分に楽しむことで、結果的に指先の細かい動作を支える筋力やバランス感覚も育まれていきます。
お外でボールを追いかけたり、公園の遊具で遊んだりすることも、立派な発達支援の一つです。「今は外遊びがブームなんだな」と理解し、その子の興味関心に寄り添うことが、心身の健やかな成長を支える土台となります。運動面で大きな遅れがなければ、手指の使い方も自然と追いついてくることがほとんどです。

 

社会性と情緒(視線が合うか・やり取りができるか)

1歳半健診の最も本質的な目的の一つは、社会性の発達を確認することです。検査項目ができるかどうかよりも、「検査員と目が合うか」「何かを見つけたときに親に共感を求めて振り返るか(共同注視)」といった部分が、発達の特性を見極める上で非常に重要な手がかりとなります。相手を意識した行動が取れているかどうかがポイントです。
積み木ができなかったとしても、崩したあとに「やったね!」とパパやママの顔を見て笑ったり、難しいときに「手伝って」というように積み木を渡してきたりするなら、社会的な発達は非常に良好です。こうした感情の交流ができることは、将来的に集団生活を送る上での大きな力となります。

お子さんの情緒が安定し、周囲に好奇心を持って接しているなら、今の発達段階としては十分です。健診の結果は一つのデータに過ぎません。それよりも、目の前のお子さんが見せてくれるキラキラした瞳や、楽しそうな笑い声を何よりの「発達の証拠」として自信を持ってくださいね。

 

1歳半健診で積み木ができなくても焦らなくて大丈夫!親子のペースを大切にしよう

 

1歳半健診の積み木テストは、多くの親御さんを不安にさせる項目ですが、決して「その子の価値」を決めるものではありません。今回の内容を振り返り、少しでも気持ちを軽くしていただければ幸いです。

 

まず、積み木ができるかどうかには大きな個人差があることを忘れないでください。1歳半という年齢は、脳も身体も急成長している真っ最中です。昨日できなかったことが明日にはできるようになる、そんな不思議な力が子供には備わっています。健診の結果はあくまで「今の時点」の一コマを切り取ったものに過ぎません。

 

また、健診で「できない」と判断されたとしても、それは「適切なサポートを受けるチャンスを得た」ということでもあります。経過観察や相談窓口は、お子さんの個性を理解し、親子で楽しく過ごしていくためのガイド役です。一人で抱え込まず、地域のサービスや専門家の知恵をどんどん活用していきましょう。

 

大切なのは、積み木を積ませることそのものではなく、親子で遊びを共有し、笑顔で過ごす時間です。親御さんの不安はお子さんにも伝わります。まずは親御さん自身が「うちの子のペースでいいんだ」と納得し、ゆったりとした気持ちで見守ってあげてください。その安心感こそが、お子さんの成長を一番に後押しする力になるはずです。