離乳食が完了期に差し掛かる1歳半ごろ、パクパクと意欲的に食べてくれるのは嬉しい反面、「あまり噛んでいない気がする」「丸飲みしているのでは?」と不安を感じる保護者の方は少なくありません。食事のたびに「カミカミしてね」と声をかけても、なかなか改善されないと心配になりますよね。
1歳半は、奥歯が生え始め、食べ物をすりつぶす練習をしている真っ最中の時期です。噛む力や舌の使い方は個人差が大きく、丸飲みには必ず理由があります。まずは、お子様がなぜ噛まないのかを理解し、発達に合わせたステップで進めていくことが大切です。
この記事では、1歳半のお子様が噛まない・丸飲みしてしまう原因を探り、無理なく噛む習慣を身につけるための具体的な改善方法をご紹介します。毎日の食卓が、親子にとってより楽しく、安心できる時間になるようなヒントをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
お子様が食べ物を噛まずに丸飲みしてしまうのには、いくつかの理由が考えられます。1歳半という時期は、幼児食への移行期であり、食べ方の癖がつきやすいタイミングでもあります。まずは現状を把握することから始めましょう。
噛まない原因として最も多いのが、食材の硬さや大きさが発達段階に合っていないことです。意外かもしれませんが、食材が「柔らかすぎる」場合も、噛む必要がないと脳が判断し、丸飲みの癖がつきやすくなります。逆に「硬すぎる・大きすぎる」場合は、噛み切ることができずにそのまま飲み込んでしまうことがあります。
1歳半ごろは、前歯で噛み切り、奥の歯ぐきや生え始めた奥歯ですりつぶす練習をする時期です。食材が口の中でバラバラになりやすいものや、弾力がありすぎるものは、子供にとって処理が難しく、丸飲みの原因になりがちです。現在の離乳食・幼児食の進み具合を見直してみるのも一つの手です。
食材の硬さの目安は、よく「バナナくらいの硬さ」と言われますが、これは歯ぐきで潰せる硬さを指します。もしお子様が丸飲みしているなら、少し形を大きくして「前歯で噛み切る」必要性を作ってあげたり、逆に少し柔らかくして「すりつぶす」感触を覚えさせたりと、微調整を繰り返していくことが改善への近道です。
噛むという動作は、私たちが思っている以上に複雑な動きを必要とします。舌を左右に動かして食べ物を奥歯の方へ運び、頬の筋肉で食べ物を保持し、上下の顎で押しつぶすという一連の流れがスムーズに行われる必要があります。1歳半では、まだこの連携が上手くできない子も珍しくありません。
特に、舌が前後にしか動かない状態だと、食べ物を横(奥歯)に送ることができないため、口に入れたものをそのまま喉の奥へ流し込んでしまいます。これを改善するには、急いで食べさせるのではなく、一口の量を適切に調整し、お子様が自分のペースで口の中の食べ物を処理するのを待ってあげる姿勢が重要です。
また、口をしっかり閉じて咀嚼する(もぐもぐする)力も未熟な場合があります。唇の力が弱いと、口を開けたまま噛むことになり、上手く力が伝わりません。ストロー飲みだけでなく、コップ飲みを練習したり、手づかみ食べで一口量を学習したりすることも、間接的に噛むための筋肉を鍛えることにつながります。
食欲旺盛なお子様や、早く遊びたいという気持ちが強いお子様によく見られるのが、口の中に食べ物を詰め込んでしまうケースです。次から次へと食べ物を放り込んでしまうと、口の中がいっぱいになり、噛むスペースがなくなります。その結果、飲み込まざるを得ない状況(丸飲み)になってしまうのです。
一口の量が多いと、咀嚼の回数が減るだけでなく、窒息のリスクも高まります。1歳半は、まだ自分がどれくらいの量を一度に処理できるか、自分自身で把握できていない段階です。大人がスプーンで運ぶ場合は、少量ずつを意識し、お子様が手づかみ食べをする場合は、噛み切りやすいサイズに調整してあげる必要があります。
「自分でお口の中を空っぽにしてから次を食べる」というリズムを教えることが大切です。飲み込んだことを確認してから、次の食べ物を差し出すようにしましょう。無理に「噛みなさい」と命令するよりも、物理的に噛まざるを得ない、適切な一口量を定着させることが、丸飲みの改善には効果的です。
噛まない・丸飲みを改善するためには、毎日の食事内容に少しの工夫を取り入れるのが最も近道です。ここでは、1歳半のお子様が自然と噛む動作を行えるような調理のコツについて詳しく見ていきましょう。
1歳半ごろになっても、手づかみ食べを続けることは非常に意味があります。スプーンやフォークで大人が食べさせてしまうと、お子様は受動的に飲み込むだけになりがちですが、自分の手で食べ物を持つことで、「どれくらいの力で持てばいいか」「どれくらい口に入れればいいか」を自ら学ぶことができます。
手づかみ食べをすることで、お子様は食べ物を前歯で「噛み切る」経験を積みます。この噛み切る動作が、奥歯で噛むための第一歩となります。スティック状の野菜や、おにぎり、パンなど、持ちやすくて前歯をしっかり使うメニューを積極的に取り入れてみてください。多少周りが汚れても、噛む力を育てる大切なトレーニング期間だと捉えましょう。
手づかみ食べの食材は、柔らかすぎると指で潰れてしまい、硬すぎると噛み切れません。例えば、茹でた人参や大根をスティック状にし、お子様が自分の意思で口に運ぶように促します。一口噛み切るごとに「もぐもぐ、上手だね」と声をかけることで、噛むことへの意識が自然と高まっていきます。
丸飲みを避けるために、食材を細かく刻みすぎていませんか?実は、1歳半を過ぎても細かく刻んだものばかりを与えていると、噛む練習の機会を奪ってしまうことがあります。刻み食は舌で押しつぶすだけで飲み込めてしまうため、噛む必要性を感じさせにくいのです。
改善のためには、食材を少し大きめの「乱切り」や「スティック状」にすることをおすすめします。均一な大きさではなく、あえて不揃いにすることで、口の中で食べ物を動かす練習になります。ただし、窒息の原因になりやすいミニトマトやブドウ、硬い豆類などは、必ず適切にカットして安全に配慮してください。
また、繊維のある食材(葉物野菜など)は、繊維を断つように切ることで噛み切りやすくなります。逆に、少し歯ごたえを残したい場合は繊維に沿って切るなど、食材の状態に合わせて調整しましょう。重要なのは、お子様が「お口の中で何かを一生懸命動かしている」状態を作ることです。少しずつ、ステップアップしていきましょう。
噛む習慣をつけるには、ただ硬いものを与えるのではなく、噛むと味がじわっと出てくるような食材や、適度な弾力があるものを選ぶのがコツです。例えば、高野豆腐や厚揚げ、火を通した薄切りの肉などは、適度な噛み応えがあり、咀嚼の練習に適しています。
白米だけでなく、少しだけ軟飯の度合いを下げたり、刻んだ野菜を混ぜて食感に変化をつけたりするのも有効です。噛む回数を増やすためには、一つの料理の中に「柔らかいもの」と「少し噛み応えのあるもの」を共存させるのが理想的です。これによって、口の中で異なる食感を処理する能力が養われます。
ただし、無理は禁物です。噛めないものを無理に与えると、丸飲みの癖を悪化させたり、食事自体を嫌いになったりする可能性があります。あくまで「今の発達よりほんの少しだけステップアップした硬さ」を目指しましょう。お子様の様子をよく観察し、疲れている時や眠い時は無理をさせない配慮も大切です。
【1歳半の噛む力をチェックしてみよう】
お子様の様子が以下の状態に当てはまる場合、食材のステップアップや環境の見直しが必要かもしれません。
・口の中に詰め込んですぐに飲み込んでいる
・ずっと口の中に食べ物が残っていて、いつまでも飲み込まない
・食事中に水分で流し込もうとしている
・食材の形がそのままの状態で排泄物に出てくる(消化不良)
これらは「噛めていないサイン」です。焦らずに、一口の量や食材の硬さを一段階戻してみることも検討しましょう。
意外と見落とされがちなのが、食事をすると時の姿勢や環境です。1歳半のお子様が集中して噛むためには、体が安定していることが非常に重要です。いくら食事の内容を工夫しても、姿勢が崩れていれば噛む力は十分に発揮されません。
椅子に座ったとき、お子様の足はブラブラしていませんか?実は、奥歯でしっかり噛み締めるためには、足の裏が床や椅子のステップ(足置き)にしっかり着いている必要があります。足が浮いている状態だと、体に力が入らず、顎を安定させて動かすことが難しくなるからです。
大人でも、足がつかない高い椅子に座って食事をすると、噛む力が弱まるのを感じるはずです。もし今使っている椅子で足が届かない場合は、踏み台を置いたり、牛乳パックで作った箱を足元に置いて調整したりして、膝が直角に曲がり、足の裏がピッタリつく環境を作ってあげましょう。
姿勢が安定すると、自然と噛む回数も増え、集中力も持続しやすくなります。丸飲みが気になる場合は、まずは食事の姿勢をチェックしてみてください。背筋が伸びて、しっかりと踏ん張れる姿勢が整うだけで、噛み方が劇的に変わるお子様もいらっしゃいます。
食事中、一口食べるごとに水や麦茶を飲んでいませんか?喉に詰まらせないか心配で、ついつい飲み物を与えてしまいがちですが、水分で流し込む習慣がつくと、噛むことをやめてしまいます。丸飲みの改善を目指すなら、食事中の水分の与え方にも注意が必要です。
本来、唾液は咀嚼を助け、飲み込みやすくする役割を持っています。水分で流し込むと唾液の分泌が促されず、消化にも良くありません。理想的なのは、口の中の食べ物をしっかり噛んで飲み込んだ後に、一休みとして水分を摂ることです。食事の最初からテーブルにコップを置かず、様子を見てから出すなどの工夫をしてみましょう。
もちろん、喉が渇いている場合や、食材がパサついてどうしても飲み込めない場合は無理をさせず水分を与えてください。しかし、「噛まなくていいから楽」という理由で水を使わせないように、食事全体の水分量を調整(スープを添える、とろみをつけるなど)しながら進めるのがポイントです。
子供は親の動作をよく見て真似をします。「噛みなさい」と言葉で指示するよりも、大人が目の前で美味しそうに、そして大げさに噛んで見せるほうが、1歳半のお子様には伝わりやすいです。鏡を見るような感覚で、親子で向かい合って食事をする時間を作りましょう。
「もぐもぐもぐ、おいしいね」と声をかけながら、口を大きく動かして噛む様子を見せてあげてください。このとき、テレビやスマホは消して、食事に集中できる環境を整えることが大切です。視覚的に「噛むこと」のイメージが湧くようになると、お子様も自然と口を動かし始めるはずです。
1歳半は模倣(まねっこ)が大好きな時期です。パパやママが「カリカリ」「ポリポリ」と音を立てて食べる様子を楽しそうに見せることで、「自分もやってみたい」という意欲を引き出せます。共食(一緒に食べること)を通じて、噛むことが楽しいことだというポジティブな印象を植え付けましょう。
【食事に集中できる環境チェック】
・テレビやタブレットの電源はオフになっていますか?
・おもちゃが視界に入らないようになっていますか?
・食事の時間は20〜30分程度で切り上げていますか?(長すぎると集中力が切れます)
・椅子とテーブルの高さは、お子様の体格に合っていますか?
1歳半の時期に丸飲みの習慣が定着してしまうと、将来的にいくつかのリスクが生じる可能性があります。逆に、正しく噛む習慣を身につけることは、お子様の健やかな成長に多大なメリットをもたらします。なぜ「噛むこと」が重要なのかを再確認しましょう。
食べ物を噛まずに丸飲みすると、食材が大きなまま胃に運ばれます。1歳半のお子様の胃腸はまだ未発達であり、大きな塊を消化するには多大なエネルギーと時間が必要です。その結果、腹痛を起こしたり、便秘や下痢の原因になったりすることがあります。
また、よく噛むことで分泌される唾液には、アミラーゼという消化酵素が含まれています。口の中で唾液と食べ物をしっかり混ぜ合わせることは、消化の最初のステップとして非常に重要です。丸飲みを改善することは、栄養を効率よく吸収し、お子様の体力を養うことにも直結しています。
もし便の中に、食べたものの形がほとんどそのまま残っているようなら、それは胃腸に負担がかかっているサインです。丸飲みの改善は、単なる食べ方のマナーではなく、内臓の健康を守るための大切なケアだと考えましょう。
噛むという動作は、顎の骨の発育に欠かせない刺激です。しっかり噛むことで顎の筋肉が発達し、それに伴って顎の骨も正しく成長します。顎が十分に発達しないと、永久歯が生えてくるためのスペースが不足し、将来的な歯並びの乱れ(叢生:そうせい)につながる可能性が指摘されています。
特に最近は、柔らかい食べ物が増えたことで「顎が小さく、歯が並びきらない」子供が増えていると言われています。1歳半からの咀嚼習慣は、一生使う歯の土台作りをしていると言っても過言ではありません。生え始めた乳歯をしっかり使って、顎に刺激を与えてあげましょう。
歯並びだけでなく、噛むことは顔回りの筋肉(表情筋)の発達にも寄与します。口元が引き締まり、はっきりとした発音(構音)ができるようになるためにも、噛む力の育成は非常に重要な役割を担っています。
咀嚼というリズム運動は、脳の血流を促進し、脳の活性化に役立つことが分かっています。特に記憶や学習を司る「海馬」という部位に良い刺激を与えるとされています。1歳半という心身ともに急成長する時期に、噛むことで脳を刺激することは、知育の面でも大きなメリットがあります。
また、よく噛むことで脳にある「満腹中枢」が刺激され、適切な満腹感を得ることができます。丸飲みだと満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまい、将来的な肥満のリスクを高める要因にもなります。逆に、しっかり噛むことで、適切な食事量を自分でコントロールできる力が養われます。
「噛む」ことは、体、脳、そして心の安定にもつながる大切な習慣です。今すぐに完璧に噛めるようになる必要はありませんが、こうしたメリットを意識することで、焦らず前向きに食事のサポートができるようになります。
【専門的な補足:咀嚼(そしゃく)とは】
咀嚼とは、食べ物を歯で噛み砕き、唾液と混ぜ合わせて、飲み込みやすい「食塊(しょっかい)」という状態にすることです。単に歯を上下させるだけでなく、舌や頬、唇が複雑に連携して行われる「口の機能」の総称でもあります。
家庭でできる工夫を続けていても、なかなか丸飲みが改善されないこともあります。そのような場合、親御さんだけで抱え込まず、専門的な視点を取り入れることも検討しましょう。個人差が大きい時期だからこそ、その子に合ったサポートが必要です。
1歳半健診や、かかりつけの歯科医院で「食べ方が気になる」と伝えてみましょう。歯の生え方や噛み合わせ、舌の動きに問題がないか、専門家の目でチェックしてもらうことができます。場合によっては、舌の筋力が弱い、あるいは「舌小帯(ぜつしょうたい)」という部分が短いために舌が動かしにくいといった物理的な原因が見つかることもあります。
専門家のアドバイスを受けることで、「この子のペースで大丈夫ですよ」と太鼓判を押してもらえれば、親御さんの心の負担も軽くなります。また、歯科衛生士から具体的なお口のトレーニング方法を教えてもらえることもあります。不安な時は早めに相談することが、改善への近道です。
食事の様子を動画に撮って見せると、より具体的なアドバイスをもらいやすくなります。どこで噛むのをやめているのか、どのように飲み込んでいるのかを視覚的に共有することで、解決策が明確になるでしょう。
特定の食感だけを嫌がって丸飲みする場合、口の中の感覚が非常に敏感な「感覚過敏」の可能性も考えられます。特定のドロドロした食感が苦手だったり、逆に粒々したものが不快だったりするために、早く口の中から消し去りたくて飲み込んでしまうケースです。
この場合、無理に噛ませようとすると食事が苦痛になり、ますます偏食が強まってしまうことがあります。お子様が好んで噛んでいる食材は何か、逆にどんな時に丸飲みしやすいかを記録してみてください。その子の「食べやすいルール」を見つけることが、改善の糸口になります。
発達の特性によるものであれば、焦らせることは逆効果です。今は「食べることは楽しい」という感覚を優先し、安心できる環境で少しずつ挑戦を促していく姿勢が求められます。必要に応じて、療育機関や専門の相談窓口を利用することも検討しましょう。
育児書やSNSの情報を見ると、「1歳半ならこれくらい食べられるはず」と比較してしまいがちですが、食事の習得スピードは本当に千差万別です。歯が生える時期が遅い子もいれば、顎の力がゆっくり育つ子もいます。周りと比べて焦る必要はありません。
大切なのは、昨日や1ヶ月前と比べて、少しでも「もぐもぐ」が増えたか、少しでも多くの食材を試せたか、というお子様自身の成長に目を向けることです。親の焦りはお子様にも伝わり、食卓の雰囲気を重くしてしまいます。リラックスした雰囲気こそが、子供が新しいことに挑戦しようとする意欲を育みます。
「そのうち噛めるようになるさ」と、ある程度の開き直りも時には必要です。1歳半はまだまだ練習の時期。栄養不足になっていないか、元気があるかを第一に考えながら、気長に付き合っていきましょう。
【アドバイス】
もし食事中にひどくむせたり、顔色が赤くなったりすることが頻繁にある場合は、早急に小児科や専門医に相談してください。安全に食事を楽しむことが何よりも優先されます。
1歳半のお子様の噛まない・丸飲みという悩みは、多くの親御さんが通る道です。この時期の丸飲みは、発達段階における通過点であることが多く、適切なサポートと工夫次第で少しずつ改善していくことができます。最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
まずは食材の硬さと大きさを調整すること。手づかみ食べを積極的に取り入れ、自分の歯で噛み切る経験を増やしましょう。刻みすぎず、少し大きめの野菜で噛む必要性を作ってあげるのがコツです。
次に、食事環境と姿勢を見直すこと。足の裏をしっかり床につけて、安定した姿勢で食べられる環境を整えてください。また、水分で流し込む癖を避け、大人が美味しそうに噛む姿を見せてあげることも非常に効果的です。
そして、無理をせずお子様のペースに寄り添うこと。噛むことは一生続く習慣です。焦って無理強いをせず、毎日の楽しい食事を通じて、少しずつ「もぐもぐ」を増やしていきましょう。不安な時は専門家を頼りながら、お子様の健やかな成長を優しく見守ってあげてくださいね。