1歳の喃語が減ったと感じる方へ。心配な原因と成長に伴う変化を詳しく解説

 

1歳を過ぎて「あーあー」「ばばば」といった喃語が減ったと感じると、親御さんとしては「言葉の発達が止まってしまったのではないか」と不安になりますよね。昨日まで賑やかだったお部屋が静かになると、何か大きな問題が隠れているのではないかと心配になるのは当然のことです。

 

しかし、1歳前後の時期は、脳や体が劇的に変化するタイミングでもあります。言葉が一時的に減ったように見えても、実は内面で大きな成長を遂げているケースが少なくありません。本記事では、1歳の喃語が減る理由や、言葉を貯めている時期のサイン、そして見守り方のポイントを分かりやすく解説します。

 

成長のスピードや順序は、子ども一人ひとりによって全く異なります。今のわが子の状態を正しく理解し、安心して子育てに向き合えるようなヒントを見つけていきましょう。専門的な視点も含めつつ、今日から実践できる関わり方もご紹介します。

 

1歳の喃語が減ったのはなぜ?考えられる主な理由と発達の仕組み

 

1歳児の喃語が減ったと感じる場合、そこには子どもの発達段階に応じた明確な理由があることが多いです。言葉が出なくなるのではなく、今は別の部分にエネルギーを使っている可能性があります。

 

喃語(なんご)とは?言葉が出るまでの大切なステップ

喃語とは、赤ちゃんが「あー」「うー」といった母音だけの声から、「ばばば」「だだだ」といった子音を含む音を発するようになる状態を指します。これは発声器官をコントロールする練習であり、言葉を話すための準備運動のようなものです。

 

1歳を過ぎると、この喃語の種類が変化したり、頻度が変わったりすることがあります。一見すると発声が減ったように見えても、実はより複雑な音を出すための準備に入っていたり、自分の意思を音以外の方法で伝えようとし始めたりする過渡期であることが多いのです。

 

言葉の発達は、ただ音を出すだけではなく、耳で聞いた音を理解し、それを真似しようとする脳の高度な働きが必要です。喃語が減った時期は、脳の中で新しい神経回路がつながろうとしている貴重な時間だと捉えることもできます。

 

「発達の踊り場」という一時的な停滞期

子どもの成長は、右肩上がりの直線で進むわけではありません。階段のように、ぐんと伸びる時期もあれば、平坦な場所を歩む「踊り場」のような時期もあります。喃語が減ったと感じるのは、まさにこの踊り場にいる可能性があります。

 

この時期の子どもは、新しく習得したスキルを脳内で整理したり、定着させたりすることに注力しています。外側からは変化がないように見えても、内面ではこれまでに覚えた音や言葉の意味をしっかりと結びつけているのです。

 

特に1歳前後は、自我が芽生え始める時期でもあります。「自分でやりたい」という意欲が高まると、そちらに集中力を持っていかれ、お喋りがおろそかになることも珍しくありません。焦らずに、今は「エネルギーを蓄えている時期なんだな」と見守ってあげることが大切です。

 

インプットに集中している「貯金」の時期

言葉の発達には「受容言語(じゅようげんご)」と「表出言語(ひょうしゅつげんご)」の2種類があります。受容言語は言葉を理解する力、表出言語は言葉を発する力です。喃語が減っている時は、この「理解する力」を養うことに全力を出しているのかもしれません。

 

「コップ持ってきて」「バイバイして」といった大人の指示を理解できているのであれば、言葉の貯金は着実に増えています。コップの中に水が溜まっていくように、頭の中に言葉が溢れるまで貯まると、やがて意味のある言葉(有意味語)として溢れ出してきます。

 

静かに周りの会話を聞いていたり、じっと大人の口元を見ていたりする場合は、音の出し方や言葉の使い時を観察している証拠です。今はアウトプットよりもインプットの優先順位が高い時期なのだと考えて、積極的に話しかけてあげましょう。

 

知っておきたい!1歳児の言葉のポイント
・喃語が減っても、大人の言うことを理解していれば過度な心配はいりません。
・成長には「踊り場」があり、一時的な停滞は自然な現象です。
・言葉を発する前に、まずはたくさんの言葉を心に貯める必要があります。

 

喃語が一時的に減る時期に考えられる子どもの成長変化

 

子どもの脳のキャパシティは限られています。何か一つのスキルを急速に伸ばしている時、他のスキルの成長が一時的に緩やかになる「発達の優先順位」が入れ替わることがよくあります。

 

身体能力の発達(歩行など)への集中

1歳前後で最も大きな変化といえば、「歩く」という運動能力の発達です。赤ちゃんにとって、自分の足で立ち、移動できるようになることは、世界が劇的に広がる大イベントです。この時、脳のエネルギーの多くは全身のバランス調整や筋力のコントロールに使われます。

 

「歩き始めたら喃語が減った」「ハイハイが上手になったら静かになった」というのは、育児の現場で非常によく聞かれる話です。これは運動発達と言葉の発達が交互にやってくるという、成長のメカニズムによるものです。

 

身体を動かすことに夢中になっている間は、発声練習としての喃語が二の次になることがあります。歩行が安定し、移動することが当たり前になってくると、再び周囲とのコミュニケーションに関心が向き、喃語や言葉が増えてくるケースがほとんどです。

 

手先の器用さと集中力の向上

1歳を過ぎると、指先を使って小さなものをつまんだり、型はめパズルに挑戦したりといった微細運動(びさいうんどう)が発達してきます。手先を使う作業は、脳を非常に活性化させますが、同時に深い集中を必要とします。

 

何かに没頭して遊んでいる時、子どもは無言になることが多いものです。これは大人でも同じですよね。手先の操作に集中している時期は、声を出すことよりも、目の前の物体をどう扱うかに全神経を注いでいる状態といえます。

 

静かに遊んでいる時間が増えたのであれば、それは「集中する力」が育っている証拠です。喃語が減ったことをマイナスに捉えるのではなく、一つのことにじっくり取り組めるようになったという成長の側面にも目を向けてみてください。

 

感情の分化と「伝えたい」方法の変化

1歳児は、喜怒哀楽の感情がより複雑になり始めます。それまでは単なる音の響きを楽しんでいた喃語から、特定の感情や要求を伝えようとする意図を持った表現へと進化していきます。この変化の過程で、古い喃語が消えていくことがあります。

 

例えば、以前は意味もなく「ばばば」と言っていた子が、指差しをしながら「あ!」と一言だけ発するようになることがあります。これは、単なる発声練習を卒業し、「特定の対象を指し示す」という高度なコミュニケーションに移行した結果です。

 

全体の音の数は減ったように感じても、身振り手振りや視線、表情など、全身を使った表現が増えていないか観察してみましょう。言葉以前のコミュニケーション能力が育っていれば、喃語の減少を心配しすぎる必要はありません。

 

言葉の発達には個人差がありますが、運動能力(粗大運動)と手先の器用さ(微細運動)が伸びている時期は、言葉が一時的に足踏みすることがあります。子どもの「今、何に夢中か」を観察してみると、安心できる理由が見つかるかもしれません。

 

言葉が出る前兆かも?喃語の変化と1歳児のコミュニケーション

 

喃語が減ったように見えても、実は質の高いコミュニケーションへと変化している場合があります。赤ちゃんから「一人の人間」としての対話へ移行する兆候を見逃さないようにしましょう。

 

指差しや身振りが増えていませんか?

言葉が減った代わりに、指差し(ゆびさし)が増えていたら、それは言葉が出る直前の素晴らしいサインです。指差しは「あそこに何かあるよ」「あれが欲しいな」という明確な意思表示であり、言葉の土台となるものです。

 

指差しをしながら大人の顔を見て、「ねえ、見て」と共感を求めてくるような行動(共視:きょうし)があれば、コミュニケーションの基礎はしっかりと築かれています。声としての喃語が少なくても、心は通い合おうとしているのです。

 

また、「バイバイ」で手を振る、「ちょうだい」で手を出すなどの身振りが増えることも重要です。これらは「特定の動作に特定の意味がある」ことを理解している証拠であり、言葉という記号を使いこなす準備が整いつつあることを示しています。

 

言葉の理解度(受容言語)をチェック

発する言葉の数よりも、実は「どれだけ言葉を理解しているか」の方が、その後の言語発達において重要です。1歳児の場合、日常生活の中でよく使う言葉に反応できているかを確認してみましょう。

 

「パパはどこ?」「靴下持ってきて」「お風呂入るよ」といった問いかけに対し、パパの方を向いたり、物を探したり、玄関に向かったりする反応があれば、受容言語は順調に育っています。言葉の回路はすでに頭の中に形成されている状態です。

 

もし喃語が減って不安な時は、簡単な指示を出してみて、お子さんがそれを理解して行動できるか試してみてください。理解できていることが分かれば、あとはそれを声に出して表現するタイミングを待つだけです。焦りは禁物ですよ。

 

「ワンワン」「ブーブー」などの一語への移行期

意味のない連続した音(喃語)が減り、特定の対象に対して決まった音を出す「一語(いちご)」への切り替わり時期には、全体の語数が一時的に減ったように感じることがあります。これは情報の精度が高まった結果です。

 

今までは「だだだ」とずっと言っていたのが、犬を見て「わんわん」とハッキリ言うようになり、それ以外の時は静かになる、といったパターンです。これは無駄な発声が減り、意味のある発音にエネルギーを凝縮させている状態です。

 

「マンマ(食事)」「パパ(父親)」など、たった一つの言葉であっても、それが意図を持って使われているのであれば、喃語が減ったのは「言葉の階段を一段登った」からだと言えます。数よりも、その一言に込められた意味に注目してあげてください。

 

言葉の理解を促す声かけのコツ
子どもが指差しをした時、「あ、赤い車だね。ブーブーだね」と、子どもの視線の先にあるものを言葉にして代弁してあげましょう。自分の興味と大人の言葉が一致する経験が、発語への近道になります。

 

お家でできる!子どもの発語を促す遊びと関わり方のコツ

 

喃語が減って心配な時は、無理に喋らせようとするのではなく、子どもが「声を出すのが楽しい!」と思えるような環境を整えてあげることが一番の近道です。

 

実況中継で言葉のシャワーを浴びせる

特別な教材を使わなくても、日常の動作をそのまま言葉にする「実況中継」は非常に効果的です。例えば、おむつを替える時に「足をあげるよ。スッキリしたね」、料理中に「野菜をトントン切るよ」といった具合です。

 

ポイントは、短く、わかりやすい言葉を使うことです。長い文章よりも、「オムツ、ポン」「おてて、ゴシゴシ」といったリズム感のある擬音語・擬態語(オノマトペ)を混ぜると、子どもの耳に残りやすくなります。

 

親御さんが楽しそうに話しかけることで、子どもは「言葉って楽しいものなんだ」「こうやって使うんだ」ということを自然に学びます。返事がなくても、子どもの心の貯金箱にはしっかりとチャリンと新しい言葉が貯まっていますよ。

 

絵本の読み聞かせと歌遊びの活用

絵本や歌は、言葉のリズムや響きを学ぶのに最適なツールです。1歳児なら、はっきりした絵と繰り返しのフレーズがある絵本がおすすめです。同じ本を何度も読みたがるのは、言葉を定着させようとしている素晴らしいサインです。

 

歌遊びでは、「幸せなら手をたたこう」や「グーチョキパーでなにつくろう」など、身振りと連動するものが特におすすめです。音楽に合わせて体を動かしながら声を出すことで、脳の広範囲が刺激され、発語が促されやすくなります。

 

完璧に歌わせようとする必要はありません。親御さんが歌うのを止めた時に、お子さんが「あ!」と言ったり、ニコッと笑ったりするだけでも、それは立派なコミュニケーションです。楽しい雰囲気の中で、声が出るチャンスをたくさん作ってあげましょう。

 

応答的な関わりを意識する

子どもが小さな声を出したり、喃語を言ったりした時は、すかさず「そうだね」「面白いね」と反応してあげてください。これを「応答的(おうとうてき)な関わり」と呼び、子どもの自己肯定感と言語意欲を育てます。

 

たとえ意味が分からない喃語であっても、「へえ、そうなの!それからどうしたの?」と、まるで会話が成立しているかのように相槌を打つことが大切です。子どもは「自分の声がママやパパに届いた!」という喜びに満たされます。

 

この満足感が、「もっと伝えたい」という意欲につながります。喃語が減った時こそ、わずかに出た声を宝物のように扱って、たくさんお返事をしてあげましょう。親子のやり取りの楽しさが、言葉を引き出す魔法になります。

 

今日からできる関わりのポイント
・子どもの動作や見ているものを短い言葉で実況する。
・リズムの良い絵本や歌を一緒に楽しむ。
・わずかな発声も見逃さず、笑顔でお返事をする。

 

受診や相談を検討する目安と発達のチェックポイント

 

多くの場合、喃語の減少は一時的なものですが、中には専門的なサポートが必要なケースもあります。どのような点に注意して観察すべきか、具体的な目安をまとめました。

 

聞こえの確認(聴覚の問題がないか)

言葉が減ったり、出にくかったりする原因の一つに、耳の聞こえの問題(難聴など)が隠れていることがあります。特に、中耳炎などを繰り返した後に静かになった場合は注意が必要です。音がしっかり聞こえていないと、音を真似ることが難しくなります。

 

背後から名前を呼んだ時に振り向くか、テレビや音楽の音に反応するか、小さな物音に気づくかなどをチェックしてみましょう。もし聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻科を受診することをお勧めします。

 

現代では新生児聴覚スクリーニング検査が一般的ですが、成長の過程で聞こえが悪くなるケースもあります。日常の何気ない反応を観察し、「音が聞こえている確信」を持てない時は、専門家に相談するのが一番の安心材料になります。

 

目が合わない、表情が乏しいなどの社会性

言葉(喃語)そのものよりも、周囲の人に関心を持っているかどうかが重要なチェックポイントになります。1歳を過ぎても「目が合わない」「あやしても笑わない」「一人でずっと同じ遊びをしている」といった様子がないか確認しましょう。

 

コミュニケーションは、声だけでなく視線や表情のやり取りから始まります。もし、親御さんが顔を覗き込んでも視線をそらしたり、共有する喜びを感じにくそうだったりする場合は、発達の専門機関に相談してみる時期かもしれません。

 

ただし、1歳児は非常に気分屋さんです。その時の機嫌や眠さによって反応が薄いこともあります。数日、数週間というスパンで観察し、「他者との関わりを求めているか」という視点で全体像を見るようにしてください。

 

自治体の健診や子育て支援センターを活用

「心配だけど、病院に行くほどではないかも……」と一人で悩むのは辛いものです。そんな時は、お住まいの地域の1歳半健診を待たずに、保健センターや子育て支援センターへ相談してみるのが良いでしょう。

 

専門の保健師さんや心理士さんは、多くの事例を見てきたプロです。「1歳の今、この状態なら大丈夫ですよ」という一言をもらうだけで、親御さんの気持ちはぐっと軽くなります。また、必要であれば適切な支援先へ繋いでくれます。

 

相談先 特徴・メリット
子育て支援センター 気軽に立ち寄れ、保育士さんなどに日頃の様子を相談しやすい。
市区町村の保健センター 発達相談の窓口があり、専門家による個別アドバイスが受けられる。
小児科(かかりつけ医) 身体的な異常や聞こえの問題、全体的な発達の遅れについて診断できる。

 

一人で抱え込まずに、まずは身近な支援者に「ちょっと心配なんです」と口に出してみることから始めましょう。親御さんの心の安定が、お子さんへの穏やかな関わりにつながります。

 

1歳の喃語が減った不安を解消するためのまとめ

 

1歳児の喃語が減ったと感じると、つい「自分の関わり方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまう方もいますが、決してそんなことはありません。言葉の発達は、子どもの中にある複雑なスイッチが順番に切り替わっていく、とても神秘的なプロセスです。

 

多くの場合、喃語が一時的に減るのは、歩行などの大きな運動機能が発達していたり、脳の中で言葉を一生懸命蓄えていたりする「成長の準備期間」です。外側に見える変化だけでなく、指差しが増えた、こちらの言うことが分かっているようだ、といった「内面の成長サイン」を大切に拾い上げてあげてください。

 

焦って教え込もうとするよりも、笑顔で話しかけ、お子さんが出す小さなサインに優しく応えてあげることが、何よりの栄養になります。どうしても不安が消えない時は、地域の相談窓口を頼る勇気を持ってくださいね。一歩ずつ、お子さんのペースに寄り添いながら、その成長を一緒に楽しんでいきましょう。