1歳を過ぎると手先が少しずつ器用になり、お絵かきに興味を持ち始めるお子さんも増えてきます。鮮やかな色で紙に線が描ける体験は、子供にとって大きな喜びです。しかし、この時期のパパやママを悩ませるのが「クレヨンを舐める」という行動ではないでしょうか。
「食べ物ではないのに、どうして口に入れてしまうの?」「もし飲み込んでしまったら体に悪くないかしら」と不安になるのは当然のことです。せっかくの表現意欲を大切にしながら、安全に遊ばせるためにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、1歳児がお絵かき中にクレヨンを舐める理由や、具体的な対策、そして万が一のときの対処法について解説します。安心して親子でアートタイムを楽しめるよう、ぜひ参考にしてください。
1歳前後のお子さんがクレヨンを舐めるのは、実は成長過程で見られるごく自然な反応です。まずは、なぜ子供がこのような行動をとるのか、その背景を知ることから始めましょう。
1歳児にとって、口は手と同じくらい重要なセンサーの役割を果たしています。この時期の子供は、初めて見るものや興味があるものに対し、口に入れて形や硬さ、味、感触を確かめようとします。これを「探索行動」と呼びます。
クレヨンは色鮮やかで、お菓子のように見えることもあります。手で握った時の感触だけでなく、舌や唇でその正体を突き止めようとしているのです。好奇心が旺盛で、脳が活発に働いている証拠ともいえるでしょう。
決して「お行儀が悪い」わけではなく、世界を理解しようとする健全な成長の一部です。無理にやめさせるのではなく、まずはその意欲を認めつつ、安全な方向へ導いてあげることが大切です。
クレヨンを口に運ぼうとしたときは、感情的に叱るのではなく、穏やかに「これは描くものだよ」と伝えてあげましょう。1歳児は「ダメ!」と強く言われると、逆にその反応を面白がって繰り返してしまうこともあります。
子供の手を優しくとり、紙に「ぐるぐる」と描いて見せることで、使い方の見本を示してあげてください。描く楽しさに意識が向けば、舐める回数も自然と減っていきます。
もし何度も舐めるのをやめない場合は、一度クレヨンを片付けて、別の遊びに切り替えるのも有効な対策です。「お絵かきはお口に入れないで遊ぶもの」というルールを、根気強く伝えていきましょう。
お子さんがクレヨンを舐めるのをやめないときは、無理に続けさせず、短時間で切り上げる勇気を持ちましょう。一度お休みすることで、次回また新しい気持ちで挑戦できるようになります。
お腹が空いているときや、喉が渇いているときにお絵かきを始めると、目の前のクレヨンを「食べ物」と勘違いして口にしやすくなる場合があります。遊びを始めるタイミングにも注意が必要です。
おやつや食事の直後など、ある程度お腹が満たされている状態でお絵かきをスタートさせてみてください。身体的な欲求が満たされていると、落ち着いて画材と向き合える可能性が高まります。
また、歯が生え始めている時期は、歯茎のむず痒さから何かを噛みたいという欲求があるかもしれません。そのような場合は、お絵かきの前に歯固め(はがため)などで遊ばせておくと、クレヨンを噛む行動を予防しやすくなります。
対策を立てていても、ほんの一瞬の隙にクレヨンを口に入れてしまうことはあります。そんなときにパパやママが慌てず行動できるよう、適切な対処ステップを確認しておきましょう。
お子さんがクレヨンを口に入れたことに気づいたら、まずは落ち着いて口の中を覗いてみてください。まだ飲み込んでいないようであれば、人差し指にガーゼなどを巻き、優しくかき出しましょう。
無理に奥まで指を入れると、逆に喉の奥へ押し込んでしまう危険があります。見える範囲にあるものを取り除くだけで構いません。その後、濡らしたタオルやガーゼで口の周りや中を拭いてあげてください。
このとき、どのくらいの量を食べてしまったのかを、手元のクレヨンの欠け具合から確認しておくことも重要です。受診が必要になった場合、食べた量や時間は医師に伝えるべき大切な情報になります。
1歳児の場合、自分でお口をゆすぐ「うがい」が完璧にできないことも多いでしょう。その場合は、無理にうがいをさせようとせず、水分を摂取させて胃の中へ流し込むようにします。
白湯やお茶、ミルクなどを少量飲ませてあげてください。水分を摂ることで、口の中に残ったクレヨンの成分を薄める効果があります。多量に飲ませる必要はありませんが、喉の違和感を和らげる助けになります。
また、乳製品(牛乳など)を飲ませると、成分によっては吸収を穏やかにする場合もあります。ただし、アレルギーがあるお子さんの場合は注意が必要ですので、普段飲み慣れているものを選びましょう。
クレヨンを誤飲した際に、無理に吐かせるのは控えましょう。吐いたものが喉に詰まったり、気管に入ってしまったりする二次被害の恐れがあります。呼吸が正常で、顔色も変わらなければ、まずは安静に様子を見ることが推奨されます。
多くのベビー用クレヨンは無害な成分で作られていますが、食べた量が多い場合や、体調に変化が見られる場合は注意が必要です。判断に迷ったときは、専門の相談窓口を利用しましょう。
もしもお子さんが「激しく咳き込む」「呼吸が苦しそう」「顔色が青白い」といった症状を見せている場合は、すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。これは中毒症状ではなく、喉に詰まった(誤嚥)可能性が高いからです。
特に症状はなく、自宅で様子を見てよいか不安な場合は、以下の窓口に電話をして状況を伝え、アドバイスをもらうのが賢明です。
| 窓口名 | 電話番号 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 大阪中毒110番 | 072-727-2499 | 24時間365日対応 |
| つくば中毒110番 | 029-852-9999 | 9:00〜21:00対応 |
| 子ども医療電話相談 | #8000 | 夜間や休日の相談 |
1歳児のお絵かきデビューには、一般的な事務用クレヨンではなく、乳幼児向けに開発された製品を選ぶことが最大の対策になります。どのような点に注目して選べばよいのでしょうか。
赤ちゃん用のクレヨンには、万が一の誤飲を想定して、食品に近い成分で作られているものが多くあります。例えば、ミツバチの巣から採れる「ミツロウ」や、お米から作られた「ライスワックス」などが代表的です。
「おやさいクレヨン」や「おこめのクレヨン」などは、その名の通り野菜や米ぬかを原料としているため、石油由来の成分に比べて安心感があります。着色料も食品用を使用している製品がほとんどです。
石油系パラフィンを使用していない自然由来の製品は、独特の油臭さが少なく、素材本来の優しい香りがするのが特徴です。お子さんが使うものだからこそ、原材料ラベルをしっかりチェックする習慣をつけましょう。
成分の安全性と同じくらい重要なのが、クレヨンの「形」です。1歳児はまだペンのように細長いものを上手く握ることができず、力を入れるとポキッと折れてしまうことがあります。
細かく折れた破片は、子供が最も口に入れやすく、喉に詰まらせやすいサイズです。そのため、1歳児には「太くて短いタイプ」や、手のひらで包むように持てる「たまご型・ブロック型」のクレヨンがおすすめです。
例えば、コロンとした形状の「ベビーコロール」などは、真ん中に穴が開いているため、万が一飲み込んでしまっても空気の通り道が確保されるよう設計されています。こうした物理的な工夫が施された製品を選ぶと安心です。
クレヨンを新しく購入したら、まずは一度洗うか、乾いた布で表面を軽く拭いてから渡してあげると、製造工程でついた余計な粉などを落とせるのでより清潔に使えます。
製品パッケージに表示されている「安全マーク」は、信頼できる画材を選ぶための重要な指標となります。これらは厳しい検査をクリアした製品にのみ与えられるものです。
APマークは、米国画材・工芸材料協会(ACMI)が認定しているマークで、人体に対して有害な物質が含まれていないことを証明しています。特に幼児向けの画材でよく見かける世界的な基準です。
また、CEマークは、欧州連合(EU)の安全基準(EN71)を満たしていることを示しています。これらには重金属の溶出試験なども含まれており、口に入れる可能性がある年齢の子供用として、高い安全性が保証されています。購入時の参考にしてください。
安全なクレヨンを用意したら、次はお絵かきをする「環境」を見直してみましょう。環境を整えることで、パパやママの精神的なゆとりも生まれ、お子さんも遊びに集中しやすくなります。
1歳のお絵かきにおいて、最も効果的な対策は「大人が目を離さないこと」です。別の家事をしながら見守るのではなく、短い時間でもよいのでお子さんの隣に腰を下ろし、一緒にお絵かきを楽しんでください。
大人が隣にいれば、クレヨンを口へ運ぼうとした瞬間に優しく制止することができます。また、「赤い色だね」「ぐるぐる描けたね」といった声かけは、子供の情緒を安定させ、口に入れる以外の楽しみを教えることにつながります。
お子さんは、パパやママが自分に注目してくれていると感じると、遊びに対する満足度が高まります。お絵かきをコミュニケーションの時間として位置づけることが、トラブル防止への近道です。
1歳児の集中力は、まだそれほど長くは続きません。個人差はありますが、1回につき5分から15分程度が目安といわれています。集中が切れてくると、手持ち無沙汰になり、クレヨンを舐めたり投げたりし始めることが多いものです。
「まだ描いてほしい」と思っても、お子さんの手が止まったり、視線が他へ向いたりしたら、その日のセッションは終了のサインです。飽きる前に片付けることで、「お絵かき=楽しい」という記憶で遊びを終えることができます。
ダラダラと画材を出しっぱなしにしないことも大切です。お絵かきが終わったら、子供と一緒にクレヨンを箱にしまうところまでセットで行い、習慣化していきましょう。
あらかじめ「今日は10分だけ」と心に決めておくと、パパやママもその間だけは全力で見守りに専念できます。時間の密度を高めることで、お互いのストレスを減らすことができます。
「床や服が汚れる」というストレスがあると、大人の気持ちがどうしてもピリピリしてしまい、お子さんへの声かけが厳しくなりがちです。汚れ対策を徹底することで、見守りに余裕を持たせましょう。
お絵かきをするときは、大きなレジャーシートを敷くか、古新聞を広めに広げておきます。テーブルの上だけでなく、足元までカバーしておけば、クレヨンを落としたときにすぐ舐めてしまうのを防ぐことにもつながります。
最近では、水で濡らした布で簡単に落とせる「水性クレヨン」や、手につきにくい「手が汚れないクレヨン」も多く販売されています。こうしたアイテムを活用して、掃除の負担を最小限に抑える工夫をしましょう。
お絵かきは単なる遊びではなく、1歳の成長にとって非常に大きなメリットをもたらします。舐める対策を行いながら、発達にどのような良い影響があるのかを知っておくと、お絵かきタイムがより愛おしいものになるはずです。
「指先は第二の脳」と言われるほど、手を使う遊びは脳への刺激になります。1歳児がクレヨンを握り、腕や手首を動かして紙に跡をつける行為は、脳の神経回路を複雑に発達させる助けとなります。
最初は思い通りに描けず、点々とするだけかもしれません。しかし、自分の動きによって色が生まれる体験は、因果関係を学ぶ第一歩です。この「点」がやがて「線」になり、やがて「円」を描けるようになっていく過程こそが成長の証です。
微細運動(指先の細かい動き)を繰り返すことで、将来の「書く力」や「箸を使う力」の土台が作られていきます。舐めることに気を配りつつ、この貴重な発達の機会をたくさん作ってあげたいですね。
お絵かきを通じて「自分には何かを変化させる力がある」と実感することは、自己肯定感の育成に直結します。白かった紙に自分の意志で色がつく様子は、子供にとって魔法のような成功体験です。
上手な絵を描くことが目的ではありません。クレヨンを持って腕を振るだけで、パパやママが「わあ、すごい!赤い線が描けたね」と喜んでくれる。その共感が、お子さんの「もっとやりたい」という意欲を育てます。
できた作品を壁に飾ったり、写真に撮って祖父母に見せたりするのも素敵です。周りの大人が反応を示すことで、お子さんは表現することの喜びを全身で感じ、自分自身をポジティブに捉えられるようになります。
1歳児の絵は「なぐり描き」と呼ばれるものですが、その中にはその時の子供の感情が詰まっています。色や線の勢いを一緒に楽しみ、その時々の成長の記録として大切に保存しておきましょう。
クレヨンは、色彩感覚を養うための素晴らしいツールです。1歳の視覚はまだ発達の途中ですが、鮮やかな色の違いはしっかりと認識しています。多くの色に触れることは、豊かな感性を育てることにつながります。
「これはイチゴと同じ赤だね」「お空と同じ青だね」といった具体的な言葉を添えながら、色と物の名前を結びつけてあげましょう。日常生活の中にある色彩への興味が、お絵かきを通じてさらに広がっていきます。
また、色が重なり合って別の色に変わる不思議や、筆圧によって濃淡が出る様子も、子供にとっては新鮮な驚きです。こうした五感を通じた学びは、知的好奇心の芽を大きく育ててくれるはずです。

1歳児がお絵かきでクレヨンを舐めるのは、周囲の世界を学び、理解しようとする前向きな成長の証です。親として不安になるのは当然ですが、適切な対策を講じることで、その好奇心を安全に守ってあげることができます。
大切なのは、万が一舐めても安心な素材(ミツロウ、お米、野菜など)を選び、物理的に飲み込みにくい形状の画材を準備することです。そして、何よりも大人が隣で見守り、一緒に描く楽しさを共有する時間にすることです。
もしクレヨンを口にしてしまっても、落ち着いて対処すれば大きなトラブルにはなりません。うがいや水分補給を行い、必要に応じて専門の窓口へ相談してください。現代のベビー用画材は非常に安全性が高いため、過度に怖がりすぎる必要はありません。
お絵かきは、お子さんの指先の発達を促し、自己肯定感や豊かな感性を育む貴重な遊びです。汚れ対策や見守り環境を整えて、パパやママも肩の力を抜きながら、お子さんと一緒に「今だけ」のカラフルな芸術を楽しんでくださいね。